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誰のためのものなのか

2014.03.21.Fri
これが○日までで、あれが○日までで、いつまでに何をして、何が○日にあって・・・というのにセッセと対処していたら、あっという間に3週間も経ってしまった。早い~(涙)

「ダラス・バイヤーズクラブ」という映画を観てきた。終映日のレイトショーにすべりこみ。もう上映期間が過ぎてしまったところが多いので、今になってのご紹介で申し訳ありません。

男の名前はロン。ロデオと酒と女の日々をおくり、ある日ロデオで賭けをするが、負けると金を払わず逃げ、その日暮らしのトレーラーハウスに戻った瞬間に、膝から崩れ落ちる。病院のベッドで目覚めると、医師が彼に告げた。HIVの陽性反応が出て、余命30日であることを。有名俳優のロック・ハドソンがエイズであることが公表され、同性愛者しかかからない病気、そんな根拠のない噂が蔓延していた時代。同性愛者でもないのになぜ!?と納得できないロンは、図書館で新聞記事を閲覧し、情報を漁る。そして自分はエイズであるという真実がつきつけられる。生きたい欲求にかられた彼は、自分を診察した女性医師イブを訪ね、AZTという未承認の薬を処方してくれるように頼むが、断られる。そこで彼はメキシコへ渡り、毒性の強いAZTではなく、アメリカでは未承認だが効果がみこめる薬を国内に持ち込み、患者たちにさばき始める。彼に慈善の心などなかった。素行が悪く、ゲイ・コミュニティーに嫌悪感を持つロンが、販売ルートを広げるのは難しい。そこで彼は、美しいトランスジェンダーのレイヨンを仲間に引き入れる。日本をはじめ、世界中から仕入れた薬をさばくために考え出したシステムが「ダラス・バイヤーズクラブ」だった。会費を募り、必要な薬を無料で配る。名目的に薬の売買はない。その彼らの前に立ちはだかったのが、AZTを推奨し始めた医師たちと製薬会社に政府。ロンは、弁護士を使い、 “個人の健康のために薬を飲む権利を侵害する”国の動きに対して徹底抗戦の構えをとる。彼を見殺しにしようとする世界に対する戦い。一人の男が、生きる権利のための戦いに挑んでいく。


「政府と製薬会社に一人戦いを挑んだ男の感動の《実話》」。HIV陽性で余命 30日と宣告されてから、必死で生き延びる道を探り、7年間生きたそうです。

いろいろ考えさせられました。エビデンスレベルが最も高いとされる二重盲検、プラセボ対照試験は、本当に患者さんのためになっているのか? そもそもエビデンスって誰のため?「承認」ってそんなにエラいのか? 今の制度は本当に患者さんを救うものになっているのか?

わたしは治験翻訳にかかわっているし、いい薬を患者さんや医療現場に早く届けたいという製薬会社の善意を信じる者ではあるけど、会社なので所詮はビジネス。相当なゴリ押しもあるだろうし、現に、データ改ざんによる誇大広告も今まさに大問題になっている。

患者さんにしてみれば、効果があって毒性の低い薬を手に入れたいだけなのに、その機会を制度に阻まれるとあれば、制度って何のため?ということになる。映画でも、そのことに悩む医師が辞職していた。

自分を守れるのは自分だけ。いろんな情報に頼りすぎず、惑わされず、いつでもしっかり自分の目を開いていないと、と思いました。
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まどさん

2014.03.01.Sat
詩人のまど・みちおさんが亡くなりましたね。
残念でなりません。

偶然、先週の土曜日に、この本を買ったばかりでした。

madomichio
(新潮社のサイトより画像をお借りしました。リンクしておきます。)

ページをめくってみると、「宇宙」という言葉がよく出てきます。
自分を生かしてくれている、大きな意思としての「宇宙」について、よく語られています。

だれに向かって書いているかと問われたら、
それは、私を私として生かしてくれている何かに対してです。
その「宇宙の意思」のようなものに対して、
お礼をこめて自分の痕跡を残したい。
私の詩は、「今日はこのように生きました」っちゅう
自然や宇宙にあてた報告なんだと思います。


あんなに易しい言葉で、あんなに上等な詩が書ける人なんて、ほかにはちょっといないんじゃないでしょうか。
まどさんの詩を、翻訳など通さずに読めるのは、日本人として幸せだと、わたしには感じられます。

生まれたところがだけがふるさとではなく、
死んでいくところもふるさと。
宇宙をふるさとにすれば、
一緒のところになります。


まどさん、宇宙に帰っちゃったんですね。
寂しいです。

足下の奇跡

2014.01.16.Thu
先週末の三連休は、某クライアントの照会事項回答にお付き合いしていて、家に引きこもっていたし、ふだん買い物に出かけるのも日が落ちてからなので、全然気がついていなかったのですが、久しぶりに昼間に外に出てみたら、うちの花だんの何とかいう木(名前忘れた)が、いつの間にかつぼみをいっぱいつけていました。

写真載せたかったけど、ボケボケの下手な写真しか撮れなかったので省略。

成果が上がらなかった下手な写真を撮りながら、長田弘さんの詩を思い出していました。

庭の小さな白梅のつぼみが
ゆっくりと静かにふくらむと、
日の光が春の影をやどしはじめる。


「奇跡―ミラクル―」というタイトルです。

この冬の日々に、世界中で密やかに進行している奇跡のひとつに、しばし寒さと時間を忘れました。

標語

2014.01.07.Tue
年始のご挨拶がすっかり遅くなってしまいましたが、あけましておめでとうございます。

今年のお正月は、数年ぶりに仕事がほとんどありませんでした。納期のゆる~い年越し案件がありましたが、年末のうちに一通り済ませ、寝かせておいて納品前に見直すだけでしたので、年始はゆっくりと本やドラマや音楽(CDだけど)や散歩を楽しみました。実家にも、もちろん帰りました。

おみくじは大吉でした。でも、わたしの前に、よそのお子さん2人と、そのお父さんが引いたおみくじも大吉でした。ちょっと奮発気味の神社だったのかも、という疑いは残りますが、まぁいいや。素直に喜んでおきます。

今年は「気楽に行こう~♪」を標語にしようと思います。自分の優柔不断な性格に対する対策です。これぐらいの心がけで、ちょうどバランスがとれるのではないかと。

そんなわけで、ノホホンと過ごした年始だったのですが、週が明けるや否や、ドドンと仕事をいただき、あぁ、年が明けたんだなぁと思いました。

コーディネーター様方、お疲れさまです。こちらもがんばります。

考える

2013.12.25.Wed
「ハンナ・アーレント」という映画を観てきました。ナチスで大量虐殺に関与した幹部アイヒマンの裁判を描いた重い映画です。

戦後、南米に逃亡していたアイヒマンが逮捕され、イスラエルで裁判が行われます。アーレントは裁判を傍聴し、当時のアメリカの雑誌に報告を寄稿します。

アイヒマンというのは残虐きわまりない悪魔だろうと、誰もが信じて疑っていませんでした。アメリカ人も、同胞のユダヤ人たちも。しかし、アーレントは、彼は悪魔などではないという結論を出します。上からの命令に従うことに徹し、自分の頭で考えることを止めただけの、ただの凡人だ、と。思考を停止した凡人が、結果として大量殺人マシンになっただけだ、と。

アーレントの言論はヒステリックな大騒動を巻き起こし、多くの人の意見と違っていたために、アーレントは孤独になってしまいます。それでも意見を撤回することはありませんでした。考えることの大切さを訴え、自分の言葉で思考することは人を救うという主張を曲げませんでした。

難しい映画だったけど、アーレントの主張に感動しました。そして、おかしな話かもしれないけど、自分の仕事と通じる部分もあると感じました。

この仕事を始めた頃ですが、自分が言葉にすることには、きちんと責任を持とうと思ったことがあって、映画を観ていてそのことを思い出したんです。翻訳というのは人様の代弁だけど、だからこそ余計に、これを書いたこの人はこう言いたいんだと、自分が考えた結論だけを積み上げなければ、と。

映画に比べれば、ずいぶんちっぽけな話ではあります。


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