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「日本語が亡びるとき」

2012.08.20.Mon
 夏が苦手なので、毎日溶けそうになりながら、なんとか生きています。わたしほど秋風を待っている人はいないわ、きっと…。

 しばらく前に、「知的文章とプレンゼンテーション」という本をご紹介しましたが、この本の影響で(←わたしはなんでもかんでも影響を受けやすいのですけど)、仕事に直接関係した実用的な本だけではなく(「英訳」とか「類義語の使い分け」とか「医学統計」とか)、言葉そのものに関する本をいくつか読みたくなって、ちょっとずつ(なかなか進みませんが)読んでいます。まずは、水村美苗の「日本語が亡びるとき」を手に取ってみました。水村美苗の本のことは、「知的文章…」にもよく出てきます。

 一読して、これまでこの本を読んでいなかったことを恥じました。言葉と翻訳にかかわっている者の端くれとして、この本を読んでいないなんてありえない(気の弱いわたしが、ここまで言い切るなんて、それこそありえないほど珍しいことです)。たしか、出版当時(2008年)に大変話題になったことは、わたしも記憶しています。それなのに、すぐに読まなかったんだからなぁ。何やってたんだろ???たぶん、目の前のことに必死で、それ以上のものに気持ちを向ける余裕がなかったのかなぁ。

 このままでは日本語が亡びてしまう、真に読まれるべきことは日本語では書かれなくなってしまうし、そういうものを読もうとする人もいなくなってしまう、という強い危機感が伝わってくる本です。英語のこと、日本語のこと、文学のこと、国語教育や英語教育のことなどについて書かれていますが、それだけにはとどまらないスケールの大きい本なので、わたしには、この本のことを手際よく語る能力はありません。どのことについても単に現状を語るのではなく、これまでの長い歴史から説きおこされていて、「そういうことだったのか」という驚きと強い説得力がありました。

 必然的に、翻訳のことについても書かれています。学問するというのが、ラテン語で読み書きすることを意味した時代から、明治時代に日本で西洋のことを学ぶために必死で行われた翻訳についてまで、その時代時代で翻訳というのがどういう意味をもつ行為であったか、どんな人が翻訳に携わってきたのかが丁寧に書かれています。わたしが仕事として行っている翻訳は、そういう翻訳とは意味も次元も異なりますが、言葉を仕事としているからには、知っておきたいことだと思いました。

 印象に残ったのは、アイルランドの言語政策のことです。アイルランドの人々が日常的に使っているのは英語ですが、実は英語はこの国の第二公用語にすぎず、第一公用語はゲール語で、ECの公用語の一つにさえなっているのだそうです。政府の公式文書のほとんどは英語とゲール語の二カ国語で書かれ、義務教育でもかなりの時間を割いて教えられているのだとか。

 まぁ、イギリスとの歴史的な軋轢の大きさを思えば、アイルランドの反英感情は相当なものと思われますが、それにしても、うらやましいと思えるほどの贅沢な、気骨ある政策です。実際には、Wikipediaによると、それほどの手厚い保護にもかかわらず、ゲール語は衰退の一途をたどっているようで気がかりです。英語の勢力の大きさを思わせる話です。言い忘れましたが、この英語の勢力というのが、この本の大きなテーマの一つになっています。

 最近どこかで読んだ受け売りですが、某○マゾンのレビューがたくさんあって、評価が1から5まで散っている本は「買い」だそうです。この本も、まぎれもなく、その一つだと思います。
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コメント
Re: ごぶさたしております。
鍵コメントの・・・様

こちらこそ、ごぶさたしております。
お仕事、少しずつ開拓しておられるようで何よりです(^_^)
本、よろしかったらお読みください。
軽くは読めませんが、とても興味深いと思いますよ。


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