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「がんと闘った科学者の記録」

2009.07.24.Fri
「がんと闘った科学者の記録」
 戸塚 洋二 著、立花 隆 編 文藝春秋社


少し前に新聞の書評に載っていて、気になったので読んでみました。

著者の戸塚洋二さんというのは、わたしは全然知らない方だったのですが、日本で最もノーベル賞に近いと言われていた物理学者で、2002年にニュートリノ研究でノーベル物理学賞を受賞した小柴昌俊氏の愛弟子のお一人だった方だそうです。この本の序文では、立花隆が戸塚氏の業績をがんの経過とからめてプロジェクトXばりに紹介していて、それを読んだだけでもちょっとウルウルときてしまいました(プロジェクトX風の話に弱いもので・・・)。

この本は、戸塚氏本人が書いたブログからテーマを絞って収載したものらしく、絞ったとはいっても、がん治療の経過、奥飛騨(スーパーカミオカンデ)の自然、庭の花、人生論など多岐にわたっています。そのなかで、やはりがん治療のことは、こんな言い方は失礼で申し訳ないのですが、興味深く読ませていただきました。

大腸がんが再発し、再々発し、肺に転移し、その転移がさらに骨、脳に拡がっていく経過は、それだけでも読んでいて胸が痛むのですが、がんの化学療法では症状だけではなく、薬剤の副作用がとてもつらいことは、ご存じの方も多いと思います。5-FU(一般名フルオロウラシル)とは相性が悪かったらしく、副作用の吐き気には本当に苦しまれたようで、たとえば、月曜日に点滴すると、吐き気止めの薬を手放せるのはようやく土曜日になってからで、日曜日にホッとするのもつかのま、月曜日にはまた点滴なのです。それを何週間か続けて、ときどき休薬するのですが、休薬というのが、どれほどホッとするものかということも伝わってきます。

わたしの仕事では、薬剤の副作用に関するデータにはしょっちゅう接しています。nausea、vomitingといえば本当によく目にする副作用で、ほとんどの薬剤で出てきます。しかし、それが一人の患者さんの苦しみとして、ここまでリアルに立ち上がってくるのを感じたことは、これまでなかったことかもしれなくて、恥じ入りました。わたしが仕事として、その末端の末端でかかわっているものの向こうには、こんなに苦しんでいる人が何万人といらっしゃるのだと、あらためてそう思いました。

吐き気だけではなく、「脱水症状、細菌性肺炎、イレウス、間質性肺炎というグレード4の副作用を潜り抜けてきました」とあります。ご本人の苦しみも想像がつかないくらいですが、そばで見ておられたご家族の方も、どれほど辛い思いをなさったかと思います。それでも、少しでも調子のいいときを縫って研究所に顔を出し、学会に出席し、と精力的に仕事を続けておられたようです。

仕事の行く末を見届けたくて、「友人にたまたまがんの大御所がいますので」、CT写真を見せて2009年まで生きられるだろうかと聞いたそうです。ですが、「そりゃ無理でしょう」とつれないお返事だったそうで(2008年7月に亡くなっておられます)、これには読んでいるこちらもびっくりしたのですが、考えてみれば、ヌケヌケと適当なことなんか言えるはずがないのです。科学者として誠実な言葉だったのだろうと思います。

今の体調をとにかく2、3ヵ月維持したい。それが望みで、ブログの当初のタイトルは「A Few More Months」だったそうです。切ないですね。

     http://fewmonths.exblog.jp/




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コメント
No title
その本とは全然違いますが、「なにがスゴイか?万能細胞」中西貴之(著)、技術評論社という本はお勧めです。バイオの入門書として非常に勉強になります。胸にジーンと来る本ではありませんが。
その本のことは知りませんでした。
紹介して下さって、ありがとうございますe-420
読んでみます!

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