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説得力

2010.04.20.Tue
物事を冷静に整理したうえで、順序立てて考える能力というのは、訓練によって鍛えられる面もあるだろうとは思うのですが、一種の才能という面が大きいんじゃないかとよく思います。わたしなんかは、そういう能力がまるっきり欠如しているので、そういうことをできる方が書いたものを読んだりすると、「すごいなー」と心から尊敬の念がわきます。最近「脳ブームの迷信」(飛鳥新社)という本を読んだのですが、この本の著者の藤田一郎さんも、そんな方の一人だなと思いました。藤田氏は第一線のバリバリの脳科学者なので、当たり前でしょう、と言われればそうかもしれないんですけど。

この本は、脳トレ、脳ブーム批判の本です。世の中で何か大きなブームが起きると、必ずそれに対する批判って出てくるものだとは思いますが、そのときの手法や書きぶりは千差万別ですね。ひどく攻撃的だったりとか。

でも、藤田氏のこの本はまるで違います。最初、やや遠慮がちですらあります。遠慮がちながらも理性的に、問題点はどこなのか、その問題点はどういう前提や背景から生まれているのかを丁寧に、掌を指すように解きほぐしてくれています。

たとえば脳トレについて、このトレーニングが脳に良いとしている川島教授の主張を検証しています。川島教授によれば、考えごとをしているときや、テレビをみているときと比較して、簡単な計算問題を解いているときは脳の広範囲で血流量が増加することがわかった、だから単純な計算問題をたくさん解くと脳の機能が向上する、ということだが、それは本当にそうなのか?ということについて、疑問点を一つ一つ検討しています。脳の血流量増加は、何を意味しているのか?脳トレのキャッチコピー「脳が活性化する」は、一般の人にどういうことをイメージさせるか?それに対して、そもそも脳科学の分野で脳が活性化するとはどういうことか?(わたしたちが日常生活でイメージしている「脳の活性化」とは違うのに混同されやすく、誤解が生まれやすいということが説明されています。)また、脳の血流量増加は、計算問題を解いたことだけが原因か?広範囲で血流量が増加するのは、単純に良いことなのか?さらに、研究結果と「計算問題を解くのは有効」という結論の間に飛躍はないのか?、ということに話を進めています。

けれど、先ほども書いたように、決して攻撃的ではありません。「具体的な議論にするために実例を出しましたが、迷信の発信源である個人や企業を非難する意図はありません。」と書いておられますし、そのことは十分に伝わってきます。川島教授の研究では実験設定に不備があることも指摘していますが、それと同時に、川島教授と任天堂の間で商品の内容について十分な意思疎通が行われなかった可能性が大きいことも問題としています。いろいろな点に目配りが利いていて、論法としてはとても冷静で穏やかだと思います。個人的にはとても好感がもてます。

脳トレ以外にも、脳ブームにまつわるさまざまな事象が取りあげられています。この本はすごく薄くて字も大きいので2時間もあれば読めてしまいますが、藤田氏がそれぞれの話題を扱う手法は緻密で美しく、説得力にあふれていて、さすがに科学者だと思います。でも、藤田氏が示しておられる物の考え方は、科学だけじゃなく、あらゆる場面でとても重要なんだろうなと思います。





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